オフサイド


振り返ると、眉間に皺を寄せ、険しい顔をした薫が立っていた。 


「ちょっと、どういうことよ?なんで、菜摘と榊くんが一緒なのよ!」 



早口でまくし立て、興奮気味の薫の肩を抱き、まずは今朝からの一部始終を話し始めた。



――と、薫はようやく落ち着きを取り戻し、笑顔を見せた。



「じゃあ、私に抜け駆けして二人が付き合っているわけじゃないんだね?」と念を押した。 



大きく頷くと、安心しきったような笑みを見せた。



裏切られた、と誤解した薫の気持ちを解くためにも、今まで黙っていたこと――裕也のことも話すことにした。




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