オフサイド
困った私は、薫に助けを求めようと視線を送ったけど、話に夢中で私のことなど目に入っていない。


マズい……。


本当にマズい展開になってきた。


みんなに付いていったところで、1曲も歌わないで済むなんてことはないだろう。


あまりにもノリが悪いと、みんなの盛り上がりに水を差しちゃうし……。


あぁ……もう、どうしよう。


「そんなに嫌なら無理に行かなくてもいいんじゃねぇ?」


「……へっ?」


助け船が出された。


まるで天の声のような気がした。


いったい誰が、こんな優しいことを……?


見上げると、今まで黙っていた榊くんだった。



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