オフサイド
同じ一歩なのに、どうしてこうも違うのだろう。
先を行く榊くんを、ペンギンのようにちょこちょこ小走りで駆け寄る。
階段の上り口で、ようやく追い付いた。
乱れる息を整え、「さっきはありがとう」とお礼を言うと、「何が?」と返され、返事に窮した。
……やっぱり、この人、苦手だ。
ホームへ通じるこの階段は、意外と傾斜がきつい。
この前数えたら、確か三十五段あったはず。
油断して、躓きでもしたら……。
気を取り直して、手摺りに掴まり、もう一方の手で短めのスカートを抑えながら慎重に階段を上った。
前を行く榊くんの背中を見つめながら――。