太陽が見てるから
翠色の折鶴
チョコレート味のつめたいソフトクリームが、翠のは好きだ。
ペプシコーラもスナック菓子も好きだけど、チョコレート味のソフトクリームが1番好き。
以前、初夏の黄昏時の公園で翠が言った。
南高校の近くには24時間営業のコンビニエンスストアーがある。
翠は朝っぱらからそこでソフトクリームを買って、毎朝、おれの自転車の後ろで食べていた。
だから、学校に到着する頃のおれのワイシャツは、少し汚れていることが多々あった。
背中に、チョコレート味のソフトクリームの、薄茶色いシミができていた。
後ろの席の女子が、
「夏井くんの後ろは、たまにチョコレートの甘い匂いがするのよね」
なんて馬鹿にしてくることもあったし、
「どうやって食べれば、背中にチョコレートのシミがつくわけ?」
なんて笑われたりもした。
授業中、教室の開け放たれた窓から、時折いたずら好きのそよ風が入ってきて、その度に甘い香りが漂ってくるとおれは翠の笑顔ばかりを想った。
元々好きではない授業なんて、完全にそっちの気で。
チョコレート味のソフトクリームを美味そうに食べる翠の笑顔ばかり考えて、おれはいつもにたにたしていた。
やみそうにはなかった。
シトシトと悲しみに暮れたように、涙雨はこの海辺の街を濡らし続けた。
始業式の日は授業が無く、全ての日程は午前11時半に終了した。
おれは覚束無い足取りで、何かに操られるようにして職員室に居るであろう、監督の元へ向かった。
健吾も一緒だった。
監督は野球部の顧問である他に、数学教師でもある。
「監督、今日の練習、おれと響也だけ休ませてください」
お願いします、と深く頭を下げたのは健吾で、監督は水色のストライプ柄のワイシャツに髭面で目を丸くした。
おれと健吾が、いや、野球部きっての野球馬鹿コンビが、練習を休ませて欲しい、と言うのだから無理もないのかもしれない。
「どうした、岩渕。夏井」
教材に、プリント。
煙草に、インスタントコーヒーの混ざりあった匂いが不快で、気が滅入った。
ペプシコーラもスナック菓子も好きだけど、チョコレート味のソフトクリームが1番好き。
以前、初夏の黄昏時の公園で翠が言った。
南高校の近くには24時間営業のコンビニエンスストアーがある。
翠は朝っぱらからそこでソフトクリームを買って、毎朝、おれの自転車の後ろで食べていた。
だから、学校に到着する頃のおれのワイシャツは、少し汚れていることが多々あった。
背中に、チョコレート味のソフトクリームの、薄茶色いシミができていた。
後ろの席の女子が、
「夏井くんの後ろは、たまにチョコレートの甘い匂いがするのよね」
なんて馬鹿にしてくることもあったし、
「どうやって食べれば、背中にチョコレートのシミがつくわけ?」
なんて笑われたりもした。
授業中、教室の開け放たれた窓から、時折いたずら好きのそよ風が入ってきて、その度に甘い香りが漂ってくるとおれは翠の笑顔ばかりを想った。
元々好きではない授業なんて、完全にそっちの気で。
チョコレート味のソフトクリームを美味そうに食べる翠の笑顔ばかり考えて、おれはいつもにたにたしていた。
やみそうにはなかった。
シトシトと悲しみに暮れたように、涙雨はこの海辺の街を濡らし続けた。
始業式の日は授業が無く、全ての日程は午前11時半に終了した。
おれは覚束無い足取りで、何かに操られるようにして職員室に居るであろう、監督の元へ向かった。
健吾も一緒だった。
監督は野球部の顧問である他に、数学教師でもある。
「監督、今日の練習、おれと響也だけ休ませてください」
お願いします、と深く頭を下げたのは健吾で、監督は水色のストライプ柄のワイシャツに髭面で目を丸くした。
おれと健吾が、いや、野球部きっての野球馬鹿コンビが、練習を休ませて欲しい、と言うのだから無理もないのかもしれない。
「どうした、岩渕。夏井」
教材に、プリント。
煙草に、インスタントコーヒーの混ざりあった匂いが不快で、気が滅入った。