太陽が見てるから
おれ達は中学3年間を共に戦った勲章を持った、最高のライバルになった。

バスに乗り込み、おれ達は第1試合の会場へ向かった。

国道をひた走るバスに揺られながら、おれは日本海を眺めていた。

午前の水面に燦々と降り注ぐ太陽の陽射しが眩しくて、胸が熱くなった。

初戦はまだ一度も対戦したことのない、市内の私立東ヶ丘高校だ。

毎回ベスト4入りする強豪だという事くらいしか、データはない。

市営球場に到着しそうな頃、メールが入った。

どうやら同じ送り主から健吾にも全く同じ内容のメールが届いたらしく、おれ達はバスの中で笑った。





DATE 9/15 10:52
From 修司
Sub 健闘を祈る
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東ヶ丘の4番は無視してもいい

あそこの本当の4番は5番打者だ
バックスタンドに向かって風が吹いていたら、直球は避けるべき





修司はライバルで敵だ。

でも、最高の仲間であり味方であり、だけど、敵だ。

敵にこんなデータを送ってくるような、ちょっとへんなライバルにおれは感謝した。









先攻、公立南高校。

後攻、私立東ヶ丘高校。

午前11時30分。

応援スタンドは9割がた満席。

熱い熱気と共に、のろしが上がった。

「プレイボール」

試合は補欠エースが投じた、低めのカーブから幕を開けた。

一回表。

奇跡の三者凡退に抑えて、一回裏、三者凡退に抑えられた。

両者一歩も譲らず、厳しい火花が散る。

「響也、次は4番からだぞ。初球は何で行く」

ベンチの一番左奥に座り、つめたく冷えたスポーツドリンクを火照る体に流し込みながら、健吾が訊いた。

「うん」

おれは少し考える。

4番からスタート、か。

東ヶ丘の4番は間違いなく、打ちにくるだろう。

この状況でバントもセーフティバントも、まず無いな。

おれは1イニング分の薄い汗をタオルで拭い、呟いた。

「アウトいっぱいの直球。次打者はスライダーから」

「オッケー。今日の響也の球、走ってるからな」

二回表。



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