太陽が見てるから
「バーカ、大学だって春休みなんだよ。昨日、こっちに戻って来たんだ」


若菜も一緒に、と相澤先輩は顔をほころばせた。


相澤先輩が東京の大学へ進学すると共に、彼女である若菜さんも一緒に上京したのだ。


相澤先輩が大学を卒業したら、2人は結婚をするつもりなのだそうだ。


相澤先輩が声を掛けてきた。


「夏井」


「はい?」


「花菜からきいたよ。翠ちゃん、大変だったんだってな」


相澤先輩は少し気を使うように言い、でも、良かったな、とおれの肩を叩いた。


「もう、大丈夫なんだろ?」


「あ、うん。今はすっげえ元気になりましたから」


とおれが言うと、すかさず健吾が続けた。


「そうそう。前よりパワーアップして、困ってるんですよ」


「そりゃ結構」


相澤先輩は二枚目の顔立ちをくしゃくしゃにして、後ろにひっくり返りそうなほど爆笑した。


相澤先輩が、別の人に見えた。


東北なまりが薄れて、髪の毛も少し伸びて茶髪で、なんだか生まれも育ちも都会の人みたいだ。


「あれ以上パワーアップしたら、地球の破滅だよなあ。大変だなあ、夏井は」


相澤先輩はげらげらと笑い、おれの背中をバシバシと遠慮なしに叩いた。


「いや、破滅上等っすね。まじで」


地球が破滅したって構わない。


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