太陽が見てるから
それから1週間後の、日曜日。


その日は雨降りだったけれど、おれの家はからりと良く晴れていた。


久しぶりに、翠が遊びにきた。


母さんと翠はかなり歳が離れているのに、まるで同級生のように仲がいい。


母さんと翠の出会いはもう1年も前の事で、今では姉妹のようだ。


さえちゃんに車で送られて来た翠を玄関で出迎えると、翠はおれなんか眼中にないようで、真っ赤なパンプスを豪快に脱ぎ捨て、まるで自宅のように堂々と上がり込む。


「モーニン!」


春らしい淡い桃色のワンピースを、翠は着ていた。


「よっ! 来てやったぞ。喜べ、補欠」


「来てやったって……翠が来たいって、だだこねたくせに」


「うっせえい!」


日曜日の朝8時の事で、おれはパジャマ代わりのスウェット姿で、寝ぼけっ面が情けなさ極まりなかった。


翠は、どいてよ、と寝起きのおれの体を片手で壁に押しやると、家に上がり、叫んだ。


「洋子! 洋子ー! 居ないのー?」


すると、ぱたぱたと陽気な足音を立てて、リビングから飛び出してきたのは、母さんだった。


「ハロー、翠ちゃん。上がってえ」


「上がってるし! てか、ちゃん、とか要らないしね。翠でいいよ。洋子」


翠は、初めて会った瞬間に、母さんを洋子と呼び捨てにした女だ。



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