太陽が見てるから
黄色い海原のように見える菜の花畑も、霧雨のおかけで今日は水分補給日和だ。
ケーキ屋のドアを引くと、カランカランカランと3度の鈴の音がおれを迎えてくれた。
壁は濃い焦げ茶色で、店内は砂糖とかチョコレートだとか、とにかく胸焼けがしてしまいそうなほど、甘ったるい香りが充満していた。
カウンターは長細いガラスケースになっている。
口どけ良さそうな、チーズケーキ。
淡雪のようにふわふわの、生クリームたっぷりの苺ショートケーキ。
焼け焦げ色のガトーショコラには、初雪のような粉砂糖がさらりと積もっていた。
その中でも一際目を引かれたのは、ショートケーキの上に乗っかった、丸く熟れた完熟の苺だった。
けれど、ショートケーキは買わない。
おれは、迷わず、店員の奥さんに即座に告げた。
「チョコレートケーキ、4つください」
おれが言うと、奥さんは「ありがとうございます」と微笑んで、手馴れた手つきで素早く紙の箱に詰めてくれた。
「今日は雨だから」
その箱をビニール袋に入れてくれた奥さんは、まだ20代後半くらいで、白い粉雪のような肌をしていた。
「濡れないように、ビニール袋に入れておきますね」
「すいません。ども」
「いいえ。お会計、1600円になります」
1ピース400円のチョコレートケーキを4つ買って、自転車のかごにそっと優しく入れ、再び来た道を引き返す。
とろとろと亀のように自転車を走らせるのには、訳があった。
ケーキ屋のドアを引くと、カランカランカランと3度の鈴の音がおれを迎えてくれた。
壁は濃い焦げ茶色で、店内は砂糖とかチョコレートだとか、とにかく胸焼けがしてしまいそうなほど、甘ったるい香りが充満していた。
カウンターは長細いガラスケースになっている。
口どけ良さそうな、チーズケーキ。
淡雪のようにふわふわの、生クリームたっぷりの苺ショートケーキ。
焼け焦げ色のガトーショコラには、初雪のような粉砂糖がさらりと積もっていた。
その中でも一際目を引かれたのは、ショートケーキの上に乗っかった、丸く熟れた完熟の苺だった。
けれど、ショートケーキは買わない。
おれは、迷わず、店員の奥さんに即座に告げた。
「チョコレートケーキ、4つください」
おれが言うと、奥さんは「ありがとうございます」と微笑んで、手馴れた手つきで素早く紙の箱に詰めてくれた。
「今日は雨だから」
その箱をビニール袋に入れてくれた奥さんは、まだ20代後半くらいで、白い粉雪のような肌をしていた。
「濡れないように、ビニール袋に入れておきますね」
「すいません。ども」
「いいえ。お会計、1600円になります」
1ピース400円のチョコレートケーキを4つ買って、自転車のかごにそっと優しく入れ、再び来た道を引き返す。
とろとろと亀のように自転車を走らせるのには、訳があった。