太陽が見てるから
小学生の時のように能天気にはいかなくなり、毎日ケンカばかりで、健吾を嫌いだと思う日が増えて行く一方だった。


でも、気が付けば、いつも隣に健吾が当たり前のように居て、おれたちは最高のバッテリーになっていった。


健吾が、ではなく、おれが、健吾じゃないとやっていけなくなっていた。


何度、ケンカして、何度、殴り合ったか分からないし、数えたら切りがない。


でも、健吾ほどおれを理解してくれる男はいないだろう。


だから、おれは、グラウンドに健吾を呼び出していたのだと思う。


無意識のうちに。


誰かに助けて貰いたかった。


健吾なら、助けてくれるんじゃないかって思ったからだ。


「なあ! 健吾」


「うん」


「何で、おれの事、そんなに分かるんだよ。すげえな」


おれでさえ、自分がよく分からなくて家を飛び出していたのに。


本当は、こうして、すぐに翠のところに行きたかったのに。


「健吾はさ、おれの最高の相方だよ」


そう言い、おれはついに泣き崩れてしまった。


健吾の背中に、もたれかかって。


春の風が優し過ぎて、雨上がりの空に架かった七色の橋が眩し過ぎて、おれは顔を上げることができなかった。


自分をなんて情けない男なんだと、叱責した。


虹の向こう側にある勇気に触れようとすることすらできなかった己の弱さに、へどが出た。


ソメイヨシノは散ったのに、八重桜はまだまだ瑞々しくて、自分の情けなさを今日ほど悔やんだ事はない。


南台大学病院に到着し、自転車を乗り捨て、走り出した時、健吾がおれの背中を力の限り叩いた。



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