太陽が見てるから
「夏井ー、アウトー! ぎゃははは」


レフト、大輝がおれに優しい頭突きをしてきた。


「この石頭! ぜってえ勝つぞ!」


もう1人のエース、、翼がおれの左腕をぎゅっと掴んだ。


「注入! おれの魂、果汁100パーセンッ」


外野の要、センター。


勇気が、こぶしでおれの胸をドンと突いた。


「夏井先輩。南高旋風、巻き起こしましょう!」


ナインのみんなが、次々におれの頭や肩や背中をグローブで叩いて、ロッカールームを飛び出して行った。


ぎゃはははー、と廊下にみんなの豪快な笑い声と足音が響いていた。


「響也」


込み上げる涙をこらえて突っ立っているおれに、健吾が声をかけてきた。


「来るって信じてた」


「健吾……ごめんな。悪かった」


「もう謝るなよ。終わった事だ」


一瞬、見つめ合ったあと、おれと健吾はどちらからともなくハイタッチして、同時にロッカールームを飛び出した。


グラウンドに向かって走って行くと、向こうから花菜が歩いてきた。


先頭を走っていた岸野から順々に、ナイン全員が花菜の頭をポン、ポン、ポン……と叩いて長い通路を駆け抜ける。


「ちょっとー、叩くなー! いったーい!」


花菜のキンキン声が、通路に木霊して跳ね返る。


「イエーイ! 花菜あ!」


健吾ももちろん、花菜の頭をポンと叩いて駆け抜けた。


「コラー! バカ健吾ー!」


鼻の穴を広げて、花菜は右手を突き上げて健吾の背中を睨んでいた。


「花菜! 甲子園行こうな!」


「あっ! 響也までひどいっ!」


おれも、花菜の小さな頭をペシッと叩いて駆け抜けた。


花菜のキンキン声が、背中に突き刺さる。


「へなちょこエース! バーカ!」





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