太陽が見てるから

茜色グラウンド

黄色い、元気な花が散った。

毎日、練習に明け暮れているグラウンド。

その片隅にあるブルペンのフェンス横に咲いていた、向日葵が潔く散った。

夏の花は咲っぷりも見事だが、散りゆく様もお見事だ。

一気に散る。

もうじき、ここには大量の秋桜が咲き乱れるのだろう。

秋がやってくる。

たぶん、急ぎ足で。








9月になって、南高校の野球部員達は、練習への意気込みが強くなった。

春の甲子園選抜の県予選があるからだ。

空は若干低くなり、ペンキを塗るハケで殴り描きしたように、薄く伸びた雲がまんべんなく広がっている。

渇いた砂ぼこりが舞い上がるグラウンド。

浜風で錆び付いた緑色のフェンス。

少し土色に染まった深紅の縫い目のボール。

代々、使い古されてきた金属バット。

商売道具の使い馴れたグローブと、スパイク。

スパイクの底は金属が光っていて、それでアスファルトを蹴っ飛ばそうものなら、火花が散る。

線香花火のような、短命な火の粉が。

ブルペンの横の道は裏門へと続いていて、下校して行く生徒達が大名行列のようにぞろぞろと通り過ぎて行く中、おれと健吾は一緒にブルペンの整備をしていた。

すると、ジャージ姿で走って来たのは、マネージャーだった。

「響也! 健吾!」

その声に、おれと健吾は整備していた手を止め、同時に振り返った。

きっと、彼女は生まれ持った才能とやらを持っているマネージャーだ。

おれはそう思っている。

「ブルペンの整備が終わったら、バックネット裏に集合ね」

と相澤花菜(あいざわかな)は言い、おれと健吾に一つずつストップウォッチを手渡してきた。

嫌な予感がした。

数メートル離れた距離を保ったまま、あからさまに嫌な顔を作り、おれと健吾は目を合わせた。

「こら! そういう顔しないの」

そう言って、クスクス、彼女は笑った。

花菜は、おれが心底惚れ込んでいる相澤隼人先輩の妹だ。

そんな兄に影響されたのだろう。

同じ一つ屋根の下で生活を共にしていれば、無理もないのかもしれない。


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