太陽が見てるから
予想していたよりも遥かに、桜花はズバ抜けていた。


南高ナインに、焦りの色が出始めていた。


苦痛の表情を浮かべて、誰1人として口を開かなくなった。


最低最悪のムードが、1塁ベンチを包む。


このまま加点され続けたら、ハイスピードで試合は終わりを迎えることになる。


このまま10点差がついてしまえば、コールドゲームで負ける事だって、有り得ないわけではない。


あと4点は絶対に守り抜かなければいけない。


そうしないと、おれたちの夏はここで終わりを迎えることになる。


4回表を気力だけで投げ切り、なんとか無得点に抑えることに成功した。


その裏、南高校はまたしても無得点に抑えられた。


1点が欲しい。


すがり付いてでも、1点が欲しい。


でも、その1点がどうしても取れない。


一球の怖さを、一打の恐ろしさを、おれは思い知らされていた。


5回表、7番打者が放った左中間を抜く長打で、桜花に1点が加算さてれた。


でも、与えたのはその1点だけで、点差は7―0。


マウンドを下りてベンチへ戻るや否や、おれは左肩に違和感を覚えた。


左肩の付け根が、熱い。


ゴウゴウと燃えたぎっている。


筋肉の奥が、微かに痛む。


左肩を押さえてうつ向くと、額から大粒の汗がボツリボツリとスパイクに落ちた。


しんと沈んだベンチに、威勢のいい声が飛んだ。


「もう、最悪! 何なの、このムード。お通夜?」


ハッとして顔を上げると、怖い顔の花菜がおれの背中を叩いた。


ナインの視線が、花菜に集中する。


「これじゃ、響也が可哀想。響也がどんなに踏ん張っても、打線が援護できないんじゃ、南高も終わりね」


ナインが肩をすくめる。


誰も言い返すやつはいない。



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