太陽が見てるから
「何で? ずっと一緒ってわけにはいかないだろ」
「えー! 何で?」
「何でって言われてもなあ……確か、翠はバスケ選択してたよな? 結衣と明里も。おれは野球だから」
これまた意味不明な一生のお願いだな、と健吾は言い、呆れ果てた顔をしておれの背中を軽く叩いた。
その問題はもう解決済みだから、と翠は言い、続けた。
「さっき、野球選択してた子とバスケ代わってもらったから」
「何で?」
とすっとんきょうな声でおれが訊くと、やや間を置いてから、
「別に! 理由なんて無いけど。しいて言うなら……負けたくないからよ」
と翠は言い、不機嫌な顔をしてぷいっとそっぽを向いてしまった。
その勢いが強かったのか、翠の金色の髪の毛に絡み付いていた雑草がほどけて、空を切りながらはらはらと落ちた。
おれと健吾は目を丸くして合わせた。
「負けたくないって、何に?」
健吾が訊くと、翠はますます難しい面持ちでぶっきらぼうに答えた。
「気持ちの問題よ、大きさとか……とにかく、女には女にしか分からない事情があるのよ」
その女の事情とやらを知る事になるのは、もう少し寒くなってからの事だった。
翠のわがままな性格は、だいたいのところは把握済みだ。
言い出したらきかない、一直線なところも。
何せ、半年近く前と後ろの付き合いをしてきたのだから。
あの陽当たりのいい、窓際後ろから2番目と3番目の席で、毎日。
「そんな訳の分からない理由でわざわざ種目代わってもらったのかよ。迷惑なやつ」
「うるさい、健吾! とにかく! 明日はあたしと一緒に行動してよ、補欠」
明日話を聞くから、と言っても、明日じゃ遅い、とか。
元気が無くなったかと思って心配したそばから、ますます元気になってみたり。
ほんとうに、翠はへんな女だ。
翠があまりにも真剣な面持ちをしているものだから、おれはついつい笑ってしまった。
クスクス小さく笑って、分かった、と言った。
「明日、一緒に野球しような、翠」
「えー! 何で?」
「何でって言われてもなあ……確か、翠はバスケ選択してたよな? 結衣と明里も。おれは野球だから」
これまた意味不明な一生のお願いだな、と健吾は言い、呆れ果てた顔をしておれの背中を軽く叩いた。
その問題はもう解決済みだから、と翠は言い、続けた。
「さっき、野球選択してた子とバスケ代わってもらったから」
「何で?」
とすっとんきょうな声でおれが訊くと、やや間を置いてから、
「別に! 理由なんて無いけど。しいて言うなら……負けたくないからよ」
と翠は言い、不機嫌な顔をしてぷいっとそっぽを向いてしまった。
その勢いが強かったのか、翠の金色の髪の毛に絡み付いていた雑草がほどけて、空を切りながらはらはらと落ちた。
おれと健吾は目を丸くして合わせた。
「負けたくないって、何に?」
健吾が訊くと、翠はますます難しい面持ちでぶっきらぼうに答えた。
「気持ちの問題よ、大きさとか……とにかく、女には女にしか分からない事情があるのよ」
その女の事情とやらを知る事になるのは、もう少し寒くなってからの事だった。
翠のわがままな性格は、だいたいのところは把握済みだ。
言い出したらきかない、一直線なところも。
何せ、半年近く前と後ろの付き合いをしてきたのだから。
あの陽当たりのいい、窓際後ろから2番目と3番目の席で、毎日。
「そんな訳の分からない理由でわざわざ種目代わってもらったのかよ。迷惑なやつ」
「うるさい、健吾! とにかく! 明日はあたしと一緒に行動してよ、補欠」
明日話を聞くから、と言っても、明日じゃ遅い、とか。
元気が無くなったかと思って心配したそばから、ますます元気になってみたり。
ほんとうに、翠はへんな女だ。
翠があまりにも真剣な面持ちをしているものだから、おれはついつい笑ってしまった。
クスクス小さく笑って、分かった、と言った。
「明日、一緒に野球しような、翠」