太陽が見てるから
初戦で敗退した先輩達の涙は、
はかなく散る桜の姿そのものだった。


おれは悔し涙の味を知った。

悔しすぎて体が震えた。



その翌日の事だ。

「夏井。お前は泣く必要はないんだぞ。
お前はにはあと4回もチャンスがある。
おれの夢の続きは、これ、に託す」

頼んだぞ、そう言って、
エースの相澤隼人先輩は
まだベンチ入りすらしていない
1年坊主のおれの左肩を叩いた。

憧れの相澤先輩の手は
想像していたよりも
遥かに大きく温かかった。

うす、と返事する事に必死で、
おれはグラウンドの
片隅に立っているのがやっとだった。

涙をこらえて朱色に染まる空を見上げ、
ふと、考えた。

例えば、1対1の同点。

そうだ。
決勝戦だとしよう。

最終回の絶体絶命の瞬間に、
おれはどんな一球を投じるだろうか。
相澤先輩なら迷わず確実に勝負するだろう。

彼は絶対に逃げたりしない。



おれは相澤先輩のように、潔く、

その一球に夏をかけることができるのだろうか。


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