太陽が見てるから
高校の時はとにかく派手で目立っていたけど、今は今で、大人びた美しさで目立っている。


「おす。結衣、明里。久しぶり」


2人は1年経っても相変わらず明るい性格のままで、人懐っこいとこも何も変わっていない。


濃い化粧はナチュラルメイクというやつになっていて、清楚にはなっているのだが。


喪服を着ているからだろうか。


やけに大人びて見える。


「あんたたちも、翠のとこに来たの?」


明里は長い睫毛をパチパチさせながら、石段の上を見上げて微笑んだ。


「うん。お初棚の前にな。結衣と明里も来てたんだな」


おれが言うと、2人はニヤリと微笑み合って、声を揃えた。


「「うちら3人の友情は、現在進行形!」」


翠。


親友たちの声、きみにちゃんと届いているだろうか。


すっげえ生意気だけど、いい友達持ったな。


翠。


その時、無風だった墓地公園にふわりと優しい風が吹いた。


「わっ」


結衣が乱れた前髪に、手ぐしを入れた。


「あんたたちも、お初棚に来るんでしょ? また後でね」


「うん」


「遅れんなよ、夏井、健吾」


そう言って、修司に一礼して先に石段を下りたのは明里で、結衣はおれのスーツの袖を引っ張った。


「あのさ、夏井」


「うん?」


結衣が小さく笑って、小声で訊いてきた。


「今でも、翠に惚れてる?」


当たり前だろ。


「相当、惚れてる」


「そっか。うん。だろうな。あんないい女はなかなかいないからな」


それだけ言って、結衣は満足そうに石段を駆け降りて行った。


吉田家の墓の前に行くと、その鮮やかさに目を奪われた。


さすが、結衣と明里だと思った。


密集しているどのお墓よりも、吉田家の墓は派手に装飾されていた。


ひまわり。


都忘れ。


山百合。


他にもたくさん、数種類の花が左右にたっぷりと生けられてあった。


「すげえや……」


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