太陽が見てるから
唖然と立ち尽くすおれの後ろで、修司がクスクス笑った。


「翠ちゃんの墓、すげえ事になってんなあ」


翠の大好物の板チョコとペプシコーラも、山積みになっている。


たぶん、結衣と明里の仕業なのだろう。


「祭りみたいだな」


修司が笑うと、


「夏祭りだな」


と健吾も肩をすくませながら、笑った。


「まあ、翠にぴったりの墓だよな。結衣も明里も、翠のこと良く分かってる」


そう言って、おれも笑った。


トルコギキョウを生けると、翠の墓はますます派手になった。


杓子にたっぷりの水をとり、墓にそっとかける。


線香に火を付け、手を合わせる。


翠。


久しぶり。


お前のことだから、元気なのだろう。


分かっているから、わざわざ訊くのはやめとくよ。


返事もいらない。


なんとなく、翠の考えそうな事なら予想がつくから。


「響也、健吾!」


うわ、すっげえぞ! 、なんて、修司がおれの肩を掴んだ。


ハッとして目を開けて振り向くと、健吾が丘の縁に駆けて行く姿があった。


青空に、薄い薄い雲が掛かっている。


そこを指差して、修司が笑った。


「翠ちゃんの仕業だったりしてな」


「え? 何が?」


おれが首を傾げると、修司は白い歯をこぼれさせて上空を指差した。


「昔、ばあちゃんから聞いたんだけどさ」


「うん?」


「あれ、確か、彩雲っていう現象だぜ」


「さいうん?」


何だ、そりゃ。


けど、きれいだ。


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