太陽が見てるから
しばらくの間、翠はおれの腕の中で泣き続けた。
ふふふ、と可愛らしい笑い声が耳にまとわりつく。
「久しぶり。補欠に抱き締めてもらえたのって、久しぶりな気がする」
そう言って、翠はくふくふと笑った。
補欠のユニフォーム、お日さまの匂いがする、そう言いながら。
上空はうっすらと夕焼け色が滲み出し、グラウンド整備も終了したようで、県立球場内にはおれと翠だけになった。
ベンチに腰掛け、膝の上に毛布ごと翠を乗せて、抱き締めた。
本当は、言いたい事が山のようにあった。
あれも、これも。
言っても言っても、一生かけて言っても足りないほど、伝えたいことがあった。
それなのに、言葉が出て来ない。
ただ、ただ、翠を抱き締め続けた。
空が茜色に染まった頃、翠がぽつりぽつりと話し始めた。
「野球ってすごいね。野球って、1人の力じゃどうにもならないんだね。人間みたいだね」
西陽が、翠の頬を薄く朱色に染めていた。
「あたしも、同じ。1人は嫌。補欠がいないと、嫌」
おれも、と言う代わりに、翠の頬に口づけをした。
くふくふと、翠が笑う。
「初めて補欠を見た日に、直感したのよね。あたしとこいつは」
そう言って、翠はおれを指差した。
「いずれは出逢う運命だったんだ、って」
翠の顔が、ゆっくりと近付いてくる。
「直感したのよね」
翠はにっこり微笑んだあと、唇を重ねてきた。
腰が抜けてしまいそうなくらい、おれは酔いしれてしまった。
翠の方からキスをして来たのは、この時が初めてだった。
唇を離して、翠がクスクス笑った。
「補欠も、そう思うでしょ?」
ふふふ、と可愛らしい笑い声が耳にまとわりつく。
「久しぶり。補欠に抱き締めてもらえたのって、久しぶりな気がする」
そう言って、翠はくふくふと笑った。
補欠のユニフォーム、お日さまの匂いがする、そう言いながら。
上空はうっすらと夕焼け色が滲み出し、グラウンド整備も終了したようで、県立球場内にはおれと翠だけになった。
ベンチに腰掛け、膝の上に毛布ごと翠を乗せて、抱き締めた。
本当は、言いたい事が山のようにあった。
あれも、これも。
言っても言っても、一生かけて言っても足りないほど、伝えたいことがあった。
それなのに、言葉が出て来ない。
ただ、ただ、翠を抱き締め続けた。
空が茜色に染まった頃、翠がぽつりぽつりと話し始めた。
「野球ってすごいね。野球って、1人の力じゃどうにもならないんだね。人間みたいだね」
西陽が、翠の頬を薄く朱色に染めていた。
「あたしも、同じ。1人は嫌。補欠がいないと、嫌」
おれも、と言う代わりに、翠の頬に口づけをした。
くふくふと、翠が笑う。
「初めて補欠を見た日に、直感したのよね。あたしとこいつは」
そう言って、翠はおれを指差した。
「いずれは出逢う運命だったんだ、って」
翠の顔が、ゆっくりと近付いてくる。
「直感したのよね」
翠はにっこり微笑んだあと、唇を重ねてきた。
腰が抜けてしまいそうなくらい、おれは酔いしれてしまった。
翠の方からキスをして来たのは、この時が初めてだった。
唇を離して、翠がクスクス笑った。
「補欠も、そう思うでしょ?」