太陽が見てるから
左利きを買われておれはピッチャーになった。

右肩の強さを認められた健吾はキャッチャーになった。

実はお互いの家が同じ学区内だったこともあって、中学も一緒で高校も同じところに進学した。

健吾とおれの間には何か特別な縁があるのかもしれない。

高校に入学して、クラスまで同じになったのだ。

放課後になると、健吾は親友から女房役になる。

高校に入学してからも、おれ達は変わらずバッテリーだ。

日々、常に一緒にいる。

「相澤先輩、大学でも野球続けるんだって。それで、受験が近くなるまで練習に参加するって。肩が鈍らないように」

くっきり二重の目を充血させながら、健吾が言った。

その目の開き具合を見ただけで分かる。

健吾はひどく興奮している。

それは、おれも同じことだった。

「まじかよ! こんなチャンス滅多にないぞ。スライダー、伝授してもらうわ」

おれは言い、机の上を平手打ちし、左手で大袈裟にガッツポーズを決めた。

平手打ちした右の手のひらが、じんじんと痺れている。

窓際後ろから三番目。

陽当たりのいいこの場所が、おれの席だ。

直射日光を浴びた机は、ほんのりと温かさを残している。

この席を、おれは気に入っている。

この席に座って窓の外に広がっている青空を眺めるのが、特に。

この南高校に入学し、半年経って高校生活に馴染んできたおれは、典型的な野球馬鹿だ。

本当に、そう思う。

24時間あるうち、23時間は野球の事ばかり考えているのかもしれない。

あわよくば夢にまで見てしまうほどだ。

3度の飯と練習の後のシャワーと同じくらい、いや、それ以上におれは野球が大好きだ。

勿論、それは健吾も同じだと思う。

いや、絶対そうに決まってる。

「っかあー! 午後の授業なんか面倒くせえ。早く野球がしてえよ」

と健吾は言い、小麦色に焼けた肌に汗を滲ませて、右肩を大袈裟にぐるぐると振り回した。

スプリンクラーのように、ぶんぶん風を起こしながら。



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