太陽が見てるから
「何? 誰か居るのかな……こんな時間に。怖っ」

と花菜は言い、睨み付けるように少しはみ出しているカーテンを見つめた。

「ああ、あそこ、さっきから開いててさ。当直の先生が見回りでもして、閉めたんじゃねえかな」

おれが言うと、花菜はほっとした様子で表情を緩ませた。

「ふうん……あれ? あそこって、響也達の教室だね」

「あ、まじだ」

花菜に言われてから気付いたが、見てみると確かにおれ達の教室の窓だった。

しかも、窓際後ろから2番目と3番目辺りの。

「あったー! 鍵がありましたがな」

ようやく鍵を見つけたらしく、健吾が駐輪場から大声を上げた。

制服のポケットに入っていたというのだから、呆れてしまった。

「いやいやいや、すいませんなあ、みなさん」

それでもおれは何か不思議な胸騒ぎを覚えて、窓からはみ出したままのカーテンから目を離せずにいた。

それは、花菜も同じだったようだ。

「ねえ、響也……人が居るっぽくない?」

「確かに」

真っ暗な窓辺にぼんやりと浮かび上がって見えたのは、暗闇でも鮮やかに見える金色だった。

それは月明かりに照らされていて、微かに滲んで見えた。

金色の頭をした人影は、はみ出したカーテンをすっと室内に引き入れ、再び窓を閉めた。

おれと花菜は同時に何かを感じ、見て、お互いに笑った。

「なあ、あれってさ……花菜はどう思う?」

「たぶん……だよね?」

「だよな」

「うん。やっぱり、ちょっと変わってる子だよね。夜の教室で何やってんだろうね」

怖くないのかな、そう言って、花菜はくふくふと笑った。

「たいした変わり者だよ」

とおれも笑った。

しばらく2人で笑って、今度は花菜から話し出した。

「何でだと思う?」

「何が」

「翠ちゃんが球技大会で、バスケから野球に変更したの」

先週の日曜にその理由を聞いたの、と花菜は意味深に言った。

「さあ、知らね。あいつ、気分屋だから」

とおれが返すと、だろうね、なんてまるで昔からおれを知り尽くしているかのように花菜は言い、続けた。



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