太陽が見てるから
まるで、接待か何かの後の酔っ払ったどこぞのおっさんのように、翠は勇ましく手を振っていた。

見た目はフランス人形のようで、どこからどう見ても15歳そこそこの高校生なのに。

一家の大黒柱のような堂々たる態度だ。

「たーだいまー」

人影は突然一時停止し、3つあるうち2つの小さいシルエットが、一目散にこちらに駆けてきた。

「みどりねえちゃーん」

1つ目は甲高い声で、後から聞こえた声はもっと甲高い声だった。

「みろりねえちゃー」

「うおーい! あかね、そうた! 遅くて心配しただろ」

ごめんね、と翠は言い、その場に立ち膝をさて両手をいっぱいに広げた。

翠に突進し抱き付いたのは、5歳前後に見える女の子と、まだ足取りも覚束無い様子の男の子だった。

男の子は抱きつくなり、翠の顔のあちらこちらに口付けの嵐だった。

「そうた、飯食ったか?」

「くったあ」

「よし! あかねは? 風呂入った?」

「はいってなあい! みどりねえちゃんとはいるんだもん」

おかっぱ頭の女の子は黄色い花柄のワンピースに身を包み、可愛らしいったらなかった。

マルコメ頭の小さな男の子はポケモンのキャラクターTシャツに、ハーフパンツの格好をしていた。

どちらも翠にびったんこに引っ付いて、どうにも離れそうにない。

「補欠、これ、あたしの妹と弟」

こっちがあかねで、こっちがそうた、と小さな2つの頭をぐりぐりと豪快に撫で回した。

ちび達は2人とも嬉しそうで、きゃあきゃあ無邪気にはしゃいでいた。

湯上がりのように、小さな頬っぺたをほんのり薄紅色に染めて。

無邪気な笑顔が本当に可愛くて自転車を停めて近寄ると、2人は人見知りをしてしまったのか、翠の背後に隠れた。

「こんばんは。あかねちゃん、そうたくん」

立ったまま言うおれを、翠は下から引っ張った。

「立ってたら怖がる! こいつらと同じ目線で話せ」

「ああ、悪い」

おれは慌ててしゃがみ込み、再び2人に話し掛けた。

「こんばんは、初めまして」

すると、先におれに飛び付いて来たのは、あかねちゃんだった。


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