Bizarre Witch~猟奇的な魔女~
アメリアの正面に座りなおした俺は麦茶の入ったコップを傾け、口に含む。どうして夏に飲む麦茶と冬に飲む麦茶はこうも味が違うのだろうと、ふと思う。


一方のアメリアは目の前に置かれたコップを握ったまま、口に持っていこうもせずにいた。


「どうしたんですか?麦茶は嫌いですか?コーヒーとか紅茶を淹れられたら良かったんですけど、淹れ方が分からなくて」


と、俺は勝手に言い訳を言った。


「いえ、そうじゃなくて、飲めないのよ」


麦茶アレルギーか?麦アレルギーってのは聞いたことがあるが、そうだとすると必然的にそのお茶も飲めないか。


「うぅん、それも違うわね」


そう言ってアメリアは頭を左右に振って自分が言ったことを自分で否定した。


「どういうことですか?」


俺はアメリアが言わんとすることにいまいちピンとこなかった。


「今の私は……何て言ったら良いかしら。そう、虚像と言ったら分かる?」


虚像という単語は知っているが、それとアメリアが麦茶を飲めない理由と全く結びつかないので、俺はさあ?と首を傾げて見せた。


「そうなの。アンタって人のスカートを覗くヘンタイの上にバカだったのね。ごめんなさい、アンタが理解出来るような言葉が見つからなくて」


物凄く失礼なことをサラリと言ってのけるアメリアに俺は何も言い返せないで居た。


「……さっきからアンタアンタって見ず知らずの相手に向かって失礼ですよ。俺は一ノ瀬翔って名前があるんです」


そしてやっとのことで俺の口から出たのはそんなものでしかなかった。
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