初恋


受験当日、高校であれから初めて彼女を見つけた。

「百瀬!」

聞こえなかったのか、彼女は教室に向かっていった。

「百瀬、待てよ」
彼女の腕を掴んだ。

「放して」
彼女は腕を振りはなそうとしたが、健人は放さなかった。

「マフラー、ありがとうあと、これも」

健人は首に巻いた青いマフラーと合格祈願のお守りを彼女に見せた。



聖美は健人がマフラーをしているのを見ると、少しはにかみながら微笑んだ。

「すっげー嬉しかった」

「―今日受験日なのよ。集中しなきゃ」
と彼女が言い、席に付いた。


(ああ~このまま抱き締められたらな…いや、だめだめ。集中集中!)



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