初恋


また同じ電車に乗り、彼女を探した。

(痛…)
彼女に叩かれ、口が切れていた。


今日は電車の中は空いていて、聖美を探すには絶好のチャンスだった。

あれから彼女を探して二週間が過ぎていた。


「…あ!」

(見つけた…)
彼女は電車の扉に寄りかかっていた。

あの頃より大人びていたが、面影は同じだった。


心臓がバクバク言っていた。


「……聖美…?」

健人は声をかけた。

彼女はゆっくり振り向き健人を見たが、誰かわからない様だった。

「…あの…?」

「俺だよ、健人」


「え?知りませんが…」

「そんなわけ…ないだろ?俺だよ健人だよ。」

彼女はわからない様子で、不審者の様に健人を見た。

「失礼します」
と言い、次の駅で降りた。


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