ちょっと短いお話集
介護ロボット
「おう、おまえさん、今度はこっちの足を拭いてくれんかね」


 皺だらけのとても優しそうなお婆ちゃんが私達に頼み込んでくる。


「はい、分かりました、久美子、あんたはそっちの足を拭いてくれる」


 かいがいしく先輩が、おばあちゃんの足元にひざまついて足を拭き始めた。


「あ、はい、あの先輩」


「何」


 先輩はとても忙しそうだ。


「いえ、なんでもないです」


 わたしはそう言って、おばあちゃんのもう一方の足を拭き始めた。


「ありがとうよ」


 そう言ってお婆ちゃんは、私に向かって飛びっきりの笑顔を見せた。


 ああ、わたしは、この笑顔のために私は働いているのね。


 そう思って、さらにがんばって足を拭いた。


 それでもたまにやるせなくなる。


「どうこの仕事、やりがいあるでしょう。おばあちゃんの笑顔も見れることだしね」


「あの、でも先輩、たまに私は考えてしまうのです、なんで私達、機械のお婆ちゃんの足を拭かなくてはいけないんだろうって」


 二千三百年、


 世の中はもはや機械がすべての事をやり、人間達は自分の生きがいの為だけに機械を作るようになっていた。
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