ちょっと短いお話集
 俺はどうすれば良いんだろう。
 人間で通して、彼女へ愛を打ち明けるべきだろうか。
 それとも、魚だと割り切って、すっぱりと諦めるべきだろうか。

 えっ、なんだって、お前は両生類じゃないかって。

 お前ら、そんな事もう一度言ってみろ、平手で思いっきり張り飛ばすぞ、水かきつきの。
 俺のどこら辺が蛙や、イモリに見えるって言うんだよ、気持ち悪い。
 失礼にもほどがあるぜ。
 まあいい、ちょっと頭に来たけれど、それで気が付いた事があるから許してやる。

 何に気が付いたかって?
 それはよ、結局、魚か人間かなんて分類は、どこかの他人が決めたことに過ぎない。俺は俺さ、魚でも人間でもない。
 俺って生き物さ。
 俺は俺、俺らしく行けば良いんじゃないかなって言うことさ。

 俺はそう考えると。胸を張って、水中を飛び出し、あの娘の元に駆け出していった。
 俺を見つけて眼を見張って見つめている金髪のポニーテールの娘。
 それを見てゆっくりと近寄っていく俺、手には美しいウミユリ。
 さあ、告白するんだ。俺らしく。
 俺はあの娘の前にひざまずいた。

「君のこ……」
「いやー、半漁人よー!」
 悲鳴を上げて逃げ出していくあの娘、ハートブレイクな俺。
 いやね、やっぱり問題は、人間か魚かって……。
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