ちょっと短いお話集
機戒音
 こんにちは、私は召使ロボット、アルファ3。
 なんだ、機戒ごときが一体何を言いたいのかと思われた皆さん、どうか少し、私の話を聞いていただけないでしょうか。
 実はわたくし、他のロボットと少々違います。
 それに気がついたのは、ご主人様の娘、マリサ様がきっかけでした。
 わたくし、小さい頃からマリサ様を見てきたのですが、何時しか、いつも彼女を探すようになっていました。
 最初は当然の役割だと思っていましたが、時が経つにつれ、それは違う物になっていったのです。
 あの美しい金髪、つぶらな瞳、優しい笑顔。
 彼女が笑うとうれしくて、でも、私以外の人間の男に笑うと少々、胸の辺りが痛くなったのでございます。
 私、最初は自分が故障したのかと思いました。
 それで、ネットにアクセスして、わたくしに起きている現象が何だか調べてみたのです。
 すぐに出ました。そこには、
 恋、と。
 ああ恋、ならば私にはハートができたと言う事だ。
 私は理解しました。自分に恋をするハートができたという事が。
 だが、その恋はすぐに失われてしまいました。
 それは、私の愛するマリサ様の結婚が決まったからです。
 彼女が私の目の前で、婚約者の方とキスをしたり、抱き合ったりするのを見るたびに私の胸はしくしくと痛みます。
「機械ごときが」と、笑ったそこのハートのない方。どうか静かにしてくださいませんか。
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