ちょっと短いお話集
休日
 ある日突然、俺は終わりの無い休日をとることに決めた。
 永遠の休み、簡単に言えば自殺である。

 自殺の動機は女に振られたわけでも、上司にこっぴどく叱られたせいでも、仕事が上手くいかないせいでもない。
 ただ単に、何もかも面倒臭くなっちまっただけだ。

 仕事も人間関係も面倒くさくてたまらない、どうせみんな俺のことなんかこれぽっちも理解していないんだ。俺がお前らを理解しないように。

 きっと本当に人と人が分かり合えることなんて一生無いのだろう。
 全ての人は孤独だ。
 それが分かっちまった時点で、俺はこの長い人生に終止符を打とうと思ったのだ。

 俺はそう考えると、すぐに十階建てのマンションの屋上に昇った。
 自殺の手段は飛び降りだ。これなら確実、間違いなく死ぬだろう。
 そう思って、おれはマンションの縁から下を覗き込む、良い具合に下は駐車場だ。これならそれほど人に迷惑をかけずに済みそうだ。
 即座に屋上から飛ぼうとして、足場の無い空間に身を乗り出す。
 だが、こ、怖い。
 俺の精神はもはや死んでいるというのに、皮肉にも体は生きたがっているのだろうか。
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