ちょっと短いお話集
 だが、再び俺は目を覚ましてしまった。

 今度は病院のベットでだ。
 白い天井が見え、沢山のチューブが俺の体につながっているようだ、その周りでは白衣をいた医者や看護婦が忙しく動き回っている。

 なあ、おれはどうなった。

 かすれている意識を振り絞って、医者に聞こうとする。
 だが、声は出ない。今できるのは眼球を動かすことだけだ。
 ちきしょう、どうやら、また自殺に失敗しちまったようだ。

 あの高さから飛び降りても死ねないなんて、体が頑丈すぎるせいだろうか、それとも、打ち所が良かったのだろうか。
 普通なら確実に死ぬだろうに、ついていない。
 俺は眼球を動かして、何とか医者に気がついてもらおうと、もう一度喋ろうとした。

 すると、一人の男が俺に気がついた。
「ああ、すまん、すまん、これから麻酔が切れたら痛みにもだえ苦しむだろうけれど、少し、我慢してくれ、そうすれば楽になるからね」
 どれくらい我慢すれば良いですか。
「そうだね、五日間だね」
 声は出ていない、それでも相手はわかるようだ。俺の質問に返事を返してきた。
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