ちょっと短いお話集
「なあ、サトシお願いがあるんだ、そのランドセルの中を見せてくれないかな」

 あれからしばらくして、ぼくは学校の帰り道にある空き地でそう頼み込んだ。

「このランドセルの中、良いけど」

 いぶかしげな顔をして、サトシは背負っていたランドセルを降ろすと、当たり前のようにふたを開けた。
 ぼくの喉がごくりとなる。きっとこの中に何か秘密があるに違いないんだ。

 でも。
「な、何もない」
 
 入っていたのは普通の学校の教科書だけだった。
 僕のと何にも変わらない。

「何もないよ、なんだよ、人の頭でもはいっていると思ったのか」
 サトシが笑いながら言った。
「でも、ぼくは確かに見たんだ、内村さんのおばさんがこの中に吸い込まれるのを」

 ぼくがそう口走るとサトシは顔色を変えた。

「馬鹿言うなよ、ケンジ。本当はおれに文句が言いたいだけじゃないのか」
 そう言いながら、サトシはランドセルを足元に置いた。
「文句?」
「ああ、そうだよ、おれが今回のリレーの選手に選ばれた事が不満なんだろう」
 サトシが詰め寄ってくる。
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