ちょっと短いお話集
 な、なんなんだよ、あのランドセル。
 まるで人食いランドセルじゃないか。

 ぼくは家に帰り部屋に入ると、扉をバタンと閉めてズルズルとドアにもたれかかる。
 あのランドセル空き地に置きっぱなしで良いのかな、また誰かまた犠牲になるんじゃないのかな。それにサトシの事を誰かに言わないと。
 
 ぼくはそう考えながら、背負っていた自分のランドセルを降ろした。
 その時、違和感を感じた。
 なんだ? 何かおかしい、ランドセルを確認する。
 すると、名前の欄に、

 こじまさとし。
 
 と、書いてあった。
 それを見た瞬間、僕の喉がひくっと鳴った。
 なんで、なんでだよ、これはサトシの人食いランドセルじゃないか。
 そう思って、ランドセルを部屋の中央に向かって投げ出す。

 するとその大きな音が聞こえたのだろうか。
「なーに、なにがあったの」と、お母さんの心配そうな声が、部屋の外から聞こえてきた。

 だめだ、この部屋にお母さんを入れるわけには行かない。お母さんまでこのランドセルに食べられてしまう。
「な、なんでもないよ」
 ぼくは部屋の中から返事をした。すると安心したのだろうか、母さんの足音が遠ざかっていく。

 助かった。いや、助かっていないんだ。
 このランドセルを、早く何とかしないと。
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