ちょっと短いお話集
 ぼくは、机の引き出しから縄跳びの紐をだした。
 これで、あのランドセルをしばって、どこか遠くに捨てにいかなくては。
 ぼくは、すぐさまランドセルの側に膝まづいた。
 手が震えている。

 いま、ランドセルから手が出てきたらおしまいだ、ぼくも吸い込まれてしまう。
 だが、今やらなくては、犠牲者が増える一方だ。

 勇気と言うよりも、追い詰められた恐怖が僕の体を動かしていた。
 ふるえる手で、縄跳びの紐でぐるぐる巻きにする。
 よし、これでいいだろう。
 少し安心して、身を起こした時。

 バチ、バチ、バチ、バチと言うすごい音共に、縄跳びの紐がはじけ飛び、ランドセルの蓋が開いた。

 まずい、ヒッと僕ののどの奥で音が鳴った。
 それと同時に、ランドセルから青い手が出てきてぼくの頭をつかんだ。

 すごい力だ。頭が割れそうだ。
 そのまま、ぼくを連れて行こうとする。
 だめだ、ランドセルに食われる。
 すると、ぼくの頭をつかんでいた手が、いつもかぶっている毛糸の帽子で、ずるりと滑った。
< 39 / 70 >

この作品をシェア

pagetop