ちょっと短いお話集
 死んだ美代子ちゃんはいつも脅えたようにその話をしていた。
「ねえ、久美子ちゃん、カーテン妖怪って知っている」
「知らない、何それ」
 わたしはこの時美代子ちゃんが冗談を言っているんだと思っていた。もしくは、脅かして楽しむ魂胆なんだと。
 だが、美代子ちゃんの顔色は真剣で冷や汗まで掻いている。
「カーテン妖怪ってね、いつもカーテンの作る暗闇に潜んでいて、一人でカーテンを引いて暗闇が出来ると、そこから現れるの」
「そんなまさか」
「本当、本当なの、カーテンで暗闇が出来ると、暗闇が欲しいか、ならばくれてやろうと言って、床に出来た暗闇が立ち上がるんだって」
「うそよ」
「お願い信じて、わたし見たの、この前行方不明になった男の子いたでしょ」
「五年生のたかふみくん?」
「そう、この前上の階に行ったときに、その男の子が、立ち上がった闇に首を絞められるのを見たの」
美代子ちゃんは必死になって続けた。
「お父さんもお母さんも信じてくれなかった、でもわたしの親友の久美子ちゃんには信じて欲しいの」
そう言って、私の目をじっと見つめる。
「分かった、信じる」
 わたしは、あまりに美代子ちゃんの様子が必死だったから、思わずそう返事をしたんだ。
「ありがとう、久美子ちゃん、これからもずっと友達でいてね」
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