ちょっと短いお話集
ミイラ男の独り言
 また、夢を見た。
 美しい女の人の夢だ。
 真っ黒な美しい髪をもち堀の深い顔立ちをしている。

「だれ?」僕は夢の中で彼女に尋ねた。
 だが、彼女は僕の質問には一切答えないで、エジプトの民族衣装らしきものを揺らしながら、こっちに向かって歩いてくると、細い手を伸ばしあごに触れた。
 あ……その冷やりとした感触に、思わず吐息が漏れそうになってしまう。

 目と目が合った。
 美しい、なんて、綺麗な黒瞳。
 僕はその彼女の瞳に吸い寄せられるかのように顔を寄せていた。
 唇と、唇が重なる。
 そこで、僕は目を覚ました。

「ねえ、あんたさ、最近痩せて来ていない、まるでミイラみたいよ」
 そんな事を言われたのは彼女の美恵子とのデートの時だ。

「そうかな」
 僕はランチの中華料理を食べている、彼女の油っこい口元に嫌悪感を感じながら言った。

「そうよ、だからもっと食べなさいよ」
 そう言いながらも美恵子は酢豚を、口に運んだ。

 僕と付き合い始めた時はスレンダーで美しかった彼女が今は醜く太って見る影も無い。

「君は少し食べすぎだと思うんだけどな」
 僕はポツリと呟いた。

「そうかしら、でも、私体重も、スタイルも変わっていないのよ」
 そう言って、醜くたるんだ二の腕を震わしながら、僕に見せた。

 ああ、何て醜いんだこの女、いや、この女だけじゃない、最近全ての女が太って見える、パリコレのモデルでさえだ。
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