ちょっと短いお話集
吸血鬼の独り言
 自分が食べるための人間牧場だって経営できやしないよ、自分を食うものを育てるなんてどうかしているもん。
 それにしても、かなわないよね、これで、外れはなんと八十回目、良く考えたら、もうみんな吸血鬼なんじゃないのかな。

 僕がそんな事を思っているとさ。

「ねえ、私これで吸血鬼に襲われたの、七十回目よ、それに私が人間を襲った事なんて一度も無いんだよね、もしかするとさ、人間なんてもう一人も残っていないんじゃないのかな」
 って彼女も同じような事を思っているわけ。
 それで僕言ってやったね。

「それじゃ、良いアイデアがあるよ、今度はさ、お昼に起きて歩いている奴を襲えば良いんだよ、そしたら、そいつは間違いなく人間だよ」ってね。
 そしたら、彼女。
「あら、それは良いアイデアね」
 だって、もちろんこれが彼女を見た最後になったね。
 馬鹿だよね、お昼に歩いたら、塵になるに決まっているじゃん。

 ある女の子の独り言
 この前はビックリしたな、噂では聞いていたけれど吸血鬼って本当に居たんだね。
 それが原因で引っ越す羽目になったけれど、助かったよ、吸血鬼が出たらこう言いなさいって、伝えられている、この辺の言い伝えを知っていて。
 ああ、本当にバカな吸血鬼でよかった。
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