ちょっと短いお話集
さくら
 あたちが、うまれたとき、このせかいは、あおいいろと、さむさにみたされていたんだ。



 あたちは、そんなさむいのがいやだったし、めざめたばかりだから、まだ、ねむたくて、たまらなかったんだけれど、うまれたからにはしかたがないので、うとうとしながらも、ひっしでさむさにたえたんだ。



 そのうち、あたちは、きがついた。
 ある、おとこのひとが、まいにち、あたちのそばにきていることを。



 なんだろう、あいつはなにしにきているんだろう?
 いつもひとりぼっちだ。
 あたちはぎもんにおもったんだけれど、あいにく、あたちはまだちいさい、そのときはあまりきにはとめなかった。



 
 それから、さむいひが、なんかい、きたんだろう。
 おてんとさまが、見えない日が、なん日きたんだろうか。



 気がつくとあたしは少し大きくなっていた。


 もう、寒さも和らいできて、ずいぶんと過ごしやすくなってきている、
 特に今日は小春日和みたいだ。あたしはそれがうれしかった。


 その時、小さな足音がして、あたしのそばでとまった。



 あの人だ、あの男の人だ、年のころは青年だろうか、とてもやさしそうな顔をして、あたしのほうを見つめている。

< 61 / 70 >

この作品をシェア

pagetop