ちょっと短いお話集
 それから、雨の日が、何度来たのだろう。


 吹き飛ばされるような、風の日が何度、来たのだろう。


 あの人の事を、何回考えただろうか。


 あの人は毎日のように来ていたけれど、それでも、会えない日もあった。


 そんな時私は、寂しくって、たまらなかった。


 でも、私は声を掛けたことはない。


 勇気がなかったのだ。

 そんな日々が過ぎ、ついに私が大人になる日が遣ってきた。


 みんなは少し不思議がるかもしれないけれど、私が大人になったのは、突然だった。


 まるで、青虫が蝶になるように、あるとき急に私は大人になったのだ。
 大人になった私はたぶん美しかったのだろう。


 みんなはそれを聞いて自信過剰と言うかもしれない。顔をしかめる人もいるかもしれない。


 でも、本当に、みんなが、わたしを見ているような気がするのだ。


 みんなが私の側に来て、夜遅くまで祝福をしてくれたりもする。


 それこそ毎晩のように。


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