ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜
「ありがとうございます…。お気持ちは大変嬉しく思います…」
「え…っ」
台本と違うセリフに驚いたのだろう。
ウシオは一瞬顔をゆがめた。
「でも私、やっぱりあなたとは一緒になれない運命にあると思うんです…。どうしてそう思うのかは、自分でもよくわかりません…。でも、私以上にあなたのことを必要としている人が、きっと他にいるはずです…。だから今の言葉は聞かなかったことにさせてください…」
「トーコさん…」
ウシオはすかさずアドリブを入れてきた。
さすがウシオだと思いながら、私は新しいセリフを言い続けた。
「今までのご親切にはホント感謝していますし、私もあなたのことは大好きです…」
「…だったら」
こちらに近づいてくるウシオの顔を見つめていたら、感きわまって涙がにじみ始めた。
「でも…、やっぱりあなたの気持ちは受け取れません…」
「そんな…、そんなこと言わないでくださいよ…」
ウシオはストーリーがそれなりに成立するよう、うまく言葉を返してくれた。