ターニングポイント
岩に体を預けて休んでいる横を、俺の祖父母位の年齢と思われる年老いた男女に抜かれるが、ただ見送ることしかできなかった。


くそっ!


情けない。


富士登山なんてくそ食らえ。


もういい、俺はここでギブアップする。


しかし陶子さんは、俺がつらくなるタイミングにはかったように休憩を入れてくれ、「あと少しよ、頑張りましょう」と声をかけてくれる。


女性である陶子さんにそう言われてしまうと、嫌とは言えない。


俺は仕方なくまた重い体を起こし、陶子さんの後に続く。


そしてやっと着いたのは、8合5勺の山小屋だった。



8合5勺……もう何も言うまい。



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