ターニングポイント
陶子さんが俺を振り返り、右手を差し出してきた。


俺はその手を握った。


「おめでとう、初登頂。
よく頑張ったわね」


俺は、かろうじて微笑んだ。


陶子さんも微笑み、俺たちはその場に荷物を下ろし、しばし休憩した。


はるか下方に広がる大地を眺めていると、日本一の山に登ったんだと感慨がわいてきた。


下から眺めるだけだった日本一の富士山の頂上に、俺は、今いるんだ。


やった。


俺はやり遂げたんだ。


しかし、俺の感動のひとときを、陶子さんの一言がさえぎった。



「ね、せっかく天気もいいし、お鉢巡りしましょう」



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