ターニングポイント
「陶子さん、これ全部買うつもり?」


ひと通り試着が終わったところで俺が聞くと、陶子さんは「ええ」と頷いた。


「お礼って言うけど、俺、たいしたことしてないし、こんなにたくさんいらないよ。

それに、こんなに上等な服買ってもらっても着ていくとこないし」


俺がそう言うと、陶子さんはいたずらっぽく微笑んだ。


「だーめ。
それにこの服は、今日着るのよ」


「今日?」


「そう、今日」


俺が首をかしげていると、店員さんが寄ってきてすそ上げが終わったことを知らせた。


「じゃあ、全部着ていくから」


陶子さんに背を押され、俺はまた試着室へ入れられた。



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