ターニングポイント
「こういうバーってよく来るの?」


夜景を見ながらグラスを傾けていた陶子さんは、グラスを置いて俺の方を向いた。


「向こうでは同僚と賑やかなパブに行くことが多いわ。こういうバーは久しぶり」


「ふうん。
彼氏と静かに飲みに行ったりはしないんだ」


俺はさっきブランドショップで気になった陶子さんの恋人の話題を振ってみた。


陶子さんはフッと一つ息を吐くと、また前を向いてグラスに手を添えた。


「今は恋人いないもの」


いないんだ……


俺は少し憂いを含んだような陶子さんの横顔を見つめた。



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