ターニングポイント
「そうね…そうかも。
日本に帰ってやりたいと思ってたことを、思ってた以上に完璧にできたから、ほっとしてるのよ」


ちょっと意外な答えに、俺は斜め下に視線を向け、陶子さんの顔を見た。


たしかに、安心したような穏やかな顔をしている。


「富士山の頂上まで登って、しかも、剣が峰にまで行って瑞江さんにお別れを言えて、やっとちゃんと供養できた気がしてるの」


ああ……


「もし雨が降ってきたら、もし強風に見舞われていたら。
そう考えると、天候に恵まれて本当にラッキーだったし、涼くんが一緒に登ってくれなかったらリタイヤしてたかもしれないしね」



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