ターニングポイント
最初は物珍しげに辺りを見回して陶子にあれこれ質問したりしていた俺だったが、行ってしまうのだと実感が沸いてくるにしたがって、口数が減った。


そんな俺に気づいて、陶子はからかうように言った。


「どうしたの、新幹線の改札での勢いはどこへ行っちゃったの?」


陶子にそう言われても、もう軽口をたたけなかった。


俺は自分で思っていた以上に、陶子に心を奪われていたのだと実感した。


ここに来て、別れがたい気持ちを抑えるのが苦しくなっていた。


「涼介、そんな顔しないで。
永遠の別れってわけじゃないわ」


陶子が困ったような表情で言った。



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