ターニングポイント
彼女を困らせたくはない。


でも、俺は自分の気持ちを偽れず、くいしばった歯の奥から言葉を搾り出した。


「行かせたくない」


俺は向き合って立つ陶子の手を取った。


陶子は目を伏せた。


困らせたくはないけど、それが本音だった。


うつむく陶子を見ていられなくなって、俺は陶子を抱きしめた。


唇を噛み、陶子が壊れるんじゃないかと思うくらい強く抱きしめた。


「涼介……」



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