ターニングポイント
「ねえ、涼くん。
瑞江さんが亡くなって、泣いた?」


唐突に聞かれ、俺は思わず陶子さんの顔を見つめた。


「え……
そりゃあまあ。
母親が死んで、泣かない子供はいないでしょう?」


俺は突然の質問の意図がわからず、苦笑しながら答えた。


そんな俺を見て、陶子さんはほんのり微笑んだ。


「そう、それならよかった。

母がね、お通夜の時にも告別式の時にも、涼くんは泣かずに、大泣きしている莉絵ちゃんを慰めてたって言っていたから。

母は、さすが長男はしっかりしてるってあなたを褒めてたけど……

あなたは溜め込んじゃう方だから、心配だったの」


「…別に、溜め込んだりなんてしてないよ」


陶子さんの人を見透かしたような言い方が気に入らなくて、反発した。




< 22 / 200 >

この作品をシェア

pagetop