ターニングポイント
「昔ね、私、瑞江さんに言われたことがあるの。
あなたと涼介はよく似てるって」


表情を硬くした俺に気づいているのかいないのか、陶子さんはそんなことを言い始めた。


似てる?


冗談。


「大学時代にね、恩師に大学院に進まないかって誘われたことがあったの。

それまで私は就職するつもりだったんだけど、とてもお世話になった教授からのお話だったから、むげにできなくて、瑞江さんに相談したの。

そしたら、涼くんの話をしてくれてね。

涼くんに学校の先生から、交換留学に行かないかって、お話があったって。

その頃、涼くんにとっては野球が第一で、本心は交換留学どころじゃないはずなのに、先生の期待に応えたい気持ちが強くて、あの子断れずにいるのよって。

瑞江さんが、自分がしたいようにしていいのよって言っても、先生がせっかく俺を選んでくれたのに悪いって言うって。

そのあと、涼くん、ストレスで急性胃炎までおこしたそうよ。

あなたと涼介はそっくり、瑞江さんにそう言われたわ」



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