ターニングポイント
「うん、車はイタリア車、っていうのが親父のこだわりだから」


親父は、仕事では国産のセダンにしか乗らないくせに、自分の趣味で乗る車は昔からイタリア車だった。


今の親父の車は、マセラティ・クーペ。


そして母の車はもう何年も前からアルファ ロメオだった。


何度か買い換えていたようだけど、いつもアルファ ロメオだった。


「母さんは、国産の軽で十分って言ってたんだけどね」


「それ、私も聞いたことあるわ。
近所しか走らないんだから、小回りのきく軽自動車でいいのにってぼやいてた」


「そうなんだよ。莉絵の習い事の送り迎えとか、買い物とか、そんなことくらいだったからね。
親しい人は親父の車道楽を知ってるからいいけど、そうじゃない人には、金持ちぶって見られていやだって、言ってた」


「ああ、その感覚、わかるわ~。
うちも決して貧乏ではないけれど、おばあちゃんが倹約家だったからね。
私も小さい頃、よく、もったいないって叱られたもの」


「もったいないって、母さんも口癖だったよ」


「フフフ、親子ねえ」



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