ターニングポイント
まだ免許を取れる年齢でない俺は、車のことはよくわからなかった。


車に興味を持たなかったのは、車が趣味の親父に対する反抗だったのかもしれない。



「陶子さん、車、好きなんだ」


「ええ、大好き。
自分の体一つでは行けない遠い場所でも、車があればあっという間でしょ。
車を発明した人を尊敬するわ。
目的もなく走るのも大好き。
ストレス解消にぴったりよ」


今にも鼻歌でも飛び出してきそうな上機嫌に俺は苦笑した。


これがさっき母の写真を見て泣いた同じ人間か?


でも、たしかに自分の思い通りにハイウェイを飛ばすのは気持ち良さそうだ。


微笑みを浮かべてハンドルを握る陶子さんがうらやましくなった。




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