ターニングポイント
こんな高級そうなレストランに親なしで入るのは初めてだった。


何がいいのかなんてわからないので、メニューは陶子さんに任せた。


海鮮が中心の前菜に舌鼓を打っていると、やがて、ステーキが見事な手さばきで目の前で焼かれはじめた。


初めて見るその手際に感心しながら見入っていると、肉が焼けていくジュージューという音と匂いに、胃袋が待ちきれなくなっていく。


目の前に差し出された焼きたてのステーキは、ミディアムレアの絶妙な焼き加減。


やわらかくジューシーで口の中に肉汁があふれ、文句のつけようがなかった。


陶子さんお勧めのお店オリジナルのオニオンソースも肉のうまみを更に際立たせた。


黙々と食べていると、陶子さんに声をかけられた。


「どう?気に入った?」

「うん、うまい!」


ほかに表現のしようがなくて素直に出た言葉を発すると、陶子さんはくすくす笑った。



< 46 / 200 >

この作品をシェア

pagetop