ターニングポイント
「仕事柄、いろんな国の人と知り合うんだけど、紛争やテロの被害に会った人とも話したことがあるの。

今現在も銃で打ち合い、爆弾を落としている国がこの地球上にはあるのよ。

想像してみて。今この瞬間も頭上から爆弾が落ちてくるかもしれないって。

一分一秒、死の恐怖に怯えながら生活するなんて、日本では考えられないでしょ?

でもね、そういう体験をした人に聞かれたことがあるの。

『陶子、日本に帰りたくないって思ったことある?』
『いいえ。NYもいいけど、やっぱり私は日本が一番好きだわ』
『僕も自分の生まれた国を愛してる。でも、今は絶対に帰りたくない。死にたくない』

彼の母国は今敵対する勢力が武力で相手を屈服させようと、文字通り火花を散らしているの。

彼の近しい人達はみな、戦火の巻き添えで亡くなったそうよ。
今、自分が生きているのも奇跡なんだと言っていたわ。
信じられる?目の前で両親も兄弟も友達もたった一発の爆弾で吹き飛ばされるなんて」




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